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東京地方裁判所 平成元年(ワ)9743号 判決 1992年10月28日

原告

昭和宅建住販株式会社

右代表者代表取締役

沖中治

右訴訟代理人弁護士

松本久二

鈴木宏明

右松本久二訴訟復代理人弁護士

羽廣政男

被告

株式会社都市企画

右代表者代表取締役

宮腰辰男

右訴訟代理人弁護士

満田繁和

主文

一  被告は、原告に対し、金二〇七万一四〇〇円及びこれに対する平成元年七月三〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用はこれを四分し、その三を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。

四  本判決は第一項に限り仮に執行することができる。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告は、原告に対し、金八九五万円及びこれに対する平成元年七月三〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

3  仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

第二  当事者の主張

一  請求原因

1  売買契約

原告は、被告との間で、昭和六二年五月一一日、被告所有の別紙物件目録第一記載の土地(宅地)及び同目録第二記載の建物(以下それぞれ「本件土地」「本件建物」という)を代金七億一四一七万八〇〇〇円で買い受ける旨の売買契約(以下「本件売買契約」という)を締結した。原告は、被告に対し、同日、手付金として九〇〇〇万円、同年六月一〇日に残金六億二四一七万八〇〇〇円を支払い、同日、本件土地建物の引渡しを受けた。

2  通常容易に発見できない目的物の瑕疵

(一) 本件売買契約締結当時、本件土地の地中には大量のプラスチック等の産業廃棄物が埋められており、また、本件土地の地表から一メートル位の地中一面に、本件建物が建築される前に本件土地上にあった旧建物の基礎及び土間コンクリートが埋設されていた。

本件売買は建物の敷地として使用する目的でなされたものであり、これらの障害物を除去しなければ本件土地上に建物を建築するための基礎工事をすることができない状態であったから、本件土地には瑕疵があったというべきである。

(二) 本件土地は、西北側が第一京浜国道(国道一五号線)、東北側が公道に接し、東北側を長辺とする長方形の形状をしている。原告が被告から本件土地を買い受けた当時、本件土地は西北側から東南側に向かって高低差五〇センチメートル位なだらかに下っており、土間コンクリートはむき出しの状態ではなく、その上を土が覆っていたのであって、第一京浜国道側から東南へ約五分の三進んだところには草が生えており、東南側の境界に近づくほど雑草に多く覆われていた。したがって、本件土地の瑕疵は、通常容易に発見することができず、隠れた瑕疵にあたる。

3  損害の発生とその額

原告は、本件土地を訴外日産プリンス神奈川販売株式会社(以下「訴外日産プリンス」という)に転売したところ、訴外日産プリンスから右埋設物の撤去工事費用八九五万円(杭打工事費二四九万四〇〇〇円、地中障害物撤去工事費五四八万六四〇〇円、諸経費九六万九六〇〇円)の支払いの請求を受け、同額の損害を被った。

4  まとめ

よって、原告は、被告に対し、本件売買契約の瑕疵担保責任に基づく損害賠償として金八九五万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成元年七月三〇日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1は認める。

2  同2の(一)のうち、埋設物の存在は知らず、その余は争う。本件売買契約は建物付きの土地売買であり、瑕疵の内容は建物について検討されるべきであり、また敷地としての土地も右建物の存続に支障を生ずることはなかったのであるから瑕疵とはならない。さらに、原告は、転売目的で本件土地を被告から購入したのであり、更地売買においては地中の埋設物は日常頻繁にみられ、無視されて売買されるのが実情であるから、仮にこれが判明しても原告が売買を断念することはなく、代金減額事由にもならなかったと考えられるのであって、原告と被告との間においてこれを瑕疵とみない特段の事情があった。

同(二)は、否認する。本件土地は、もと鉄工所の敷地として利用されていた。被告が本件土地を訴外イフジ産業株式会社(以下「訴外イフジ産業」という)ほか一社から購入した時には既に鉄工所の建屋は取り壊されていたが、被告は、旧所有者から購入した当時の状況のまま原告に引き渡しており、本件売買契約締結当時、本件土地の第一京浜国道から入った側(西北側)には、コンクリートの殼、バラスが敷かれており、その上に車両が放置されていた。そこから東南側に五分の三ほど進むと約一メートル低くなっており、土間コンクリートがむきだしになって東南側の境界まで続いていた。したがって、西北側五分の三の部分の地中にも土間コンクリートが存在するであろうことは容易に認識し得る状態であり、また、建物基礎が存在するであろうことも合理的に推測し得た。

3  同3は否認する。原告が、訴外ビル開発株式会社(以下「訴外ビル開発」という)から請求を受けているとしても、現実に支払ったわけではないのであるから、損害を被ったとはいえない。杭打工事費用については、新築工事にあたっては、地中の強度検査のためボーリング調査をすることが不可欠であり、これを行っていれば出費する必要はなかったし、産業廃棄物についても、被告の別の建築現場の処理とともに行えば低廉で行い得たものであるから、損害額に含めるべきではない。

三  抗弁

1  原告の悪意

原告は、本件売買契約当時、本件土地の地中に建物の基礎及び土間コンクリートが埋設されていることを知っていた。

2  原告の有過失

原告は、本件売買契約当時、以下の事実から、本件土地の地中に建物の基礎及び土間コンクリートが埋設されていることを知り得た。

(一) 本件土地の東南側五分の二ほどは、土間コンクリートがむき出しになっていた。

(二) 本件土地がもと鉄工所の敷地として利用されていたことを原告は知っていた。

(三) 原告は、本件土地建物を買い受ける前に約三か月間、訴外日東インダストリーリース株式会社(以下「訴外日東インダストリー」という)から、本件建物を賃借し、本件土地を利用していた。

(四) 原告は、被告が本件土地を訴外イフジ産業ほか一社から購入する以前から、本件土地を取得したいとして当時の所有者に働き掛けていたもので、本件土地の状況を、被告が購入する以前から熟知していた。

(五) 原告は不動産業者である。

3  原告の目的物検査・瑕疵通知義務(商法五二六条)違反

(一) 原告及び被告は、いずれも建設業等を目的とする株式会社であり商人である。

(二) 商人間の売買においては、買主は目的物を受領したときは遅滞なく瑕疵の有無について検査し、これを発見したときは直ちに売主に通知すべきであり、仮に売買の目的物に直ちに発見することができない瑕疵があっても、受領後六か月と通知に必要な期間経過後には瑕疵担保責任を追及することができなくなるところ、原告が被告から本件土地の引渡しを受けた昭和六二年六月一〇日から遅くとも六か月とその後通知を発するのに必要な期間が経過した。

四  抗弁に対する認否

1  抗弁1は否認する。

2  抗弁2の(一)は否認する。同(二)は認める。同(三)のうち、被告が、訴外日東インダストリーにより、本件土地建物を売却する前三か月間本件建物を原告に賃貸させていたことは認めるが、利用していたとの点は否認する。賃貸借契約は形式的なものであった。同(四)は否認する。同(五)は認める。

3  抗弁3の(一)、(二)は認める。

五  再抗弁―被告の悪意(抗弁2、3に対して)

被告は、本件売買契約当時、本件土地内に旧建屋の土間コンクリート及び建物基礎が存在することを認識していたのに原告にこれを告げず、本件売買を行ったのであるから、原告の悪意を主張できないし、抗弁3の相当期間経過前に本件土地に瑕疵があることを知っていたものであって、通知を要しない場合にあたる。

六  再抗弁に対する認否

再抗弁のうち、本件土地の第一京浜国道から東南に約三分の二進んだ地点から東南の端まで土間コンクリートがむき出しになっていたのを被告が知っていたことは認め、その余は否認する。

第三  証拠<省略>

理由

一請求原因1の事実(売買契約)は当事者間に争いがない。

二そこで、目的物の瑕疵について検討する。

1(一)  証人内尾敏治、岩根勝徳の証言、<書証番号略>によれば、本件土地は、もと訴外イフジ産業ほか一名が所有していたが、昭和六一年一一月一八日に被告が買い受け、その後昭和六二年五月一一日に原告が購入し(本件売買)、原告は同年一〇月一四日訴外ビル開発に、同社は同年一二月二四日に訴外日産プリンスに売却したことが認められる。

(二)  <書証番号略>、証人野寺光夫の証言によれば、訴外富山建設工業株式会社が訴外日産プリンスの依頼で本件土地の新築工事を行った昭和六三年九月当時、本件土地の地中に大量の材木片等の産業廃棄物が埋められていたこと、本件土地の地表から一メートル位の地中に本件建物以前の旧建物の土間コンクリート(厚さ約一五センチメートル、以下「土間コン」という)が一面に埋設されていたこと、その下に旧建物の基礎(深いもので長さ約二メートル、一〇個、以下「建物基礎」という)が存在したことが認められる。

2  本件取引は宅地およびその地上建物の売買であるが、証人藤岡明、内尾敏治、久次庸夫の各証言によれば、本件建物は税金対策のための本件取引に際して建築されたプレハブ建物にすぎず、それ自体に実質的価値があるものとして売買の対象となったものではないことが明らかであるから、本件を建物付土地の取引であるとして敷地たる本件土地の埋設物の存在は瑕疵にならないとする被告の主張は、その前提において失当であり採用できない。

ところで、宅地の売買において、地中に土以外の異物が存在する場合一般が、直ちに土地の瑕疵を構成するものでないことはいうまでもないが、その土地上に建物を建築するについて支障となる質・量の異物が地中に存在するために、その土地の外見から通常予測され得る地盤の整備・改良の程度を超える特別の異物除去工事等を必要とする場合には、宅地として通常有すべき性状を備えないものとして土地の瑕疵になるものと解すべきである。本件の場合、前記認定のように、大量の材木片等の産業廃棄物、広い範囲にわたる厚さ約一五センチメートルのコンクリート土間及び最長約二メートルのコンクリート基礎一〇個が地中に存在し、これらを除去するために後述のように相当の費用を要する特別の工事をしなければならなかったのであるから、これらの存在は土地の瑕疵にあたるものというべきである。本件売買契約において、こうした異物の存在までも瑕疵とみないという特段の事情があったことは認められない(ちなみに、<書証番号略>の契約書には、売主が瑕疵担保責任を負うべき旨の規定がある)。

3  右産業廃棄物の存在については、これを容易に認識し得る状況になかったことを、被告は明らかに争わない。

そこで、土間コン及び建物基礎が、本件売買契約当時、通常容易に発見できない瑕疵であったといえるかどうかを検討する。

(一)  本件土地のうち国道一五号線側から東南の方向に向かって約五分の三まで進んだ部分(以下「甲部分」という)については、土間コン及び建物基礎が地中に隠れていたことは当事者間に争いがない。

残余の約五分の二の部分(以下「乙部分」という)については、本件売買契約当時、原告は土で覆われていたと主張し、被告は土間コンが露出していたと主張している。もし、被告主張のとおりであるとすれば、甲部分の地中の土間コン、ひいては建物基礎についても存在を推測すべきこととなり、通常容易に発見し得ない瑕疵であったとはいえないことになろう。

(二)  証人藤井徳夫、久次庸夫、岩根勝徳の各証言によれば、被告が前所有者である訴外イフジ産業ほか一名から本件土地を購入した昭和六一年一一月一八日当時には、甲部分と乙部分との間には約七〇センチメートルから一メートルの段差があり、乙部分には土間コンが露出していたことが認められ、この認定に反する証拠はない。

他方、証人藤岡明、久次庸夫、内尾敏治、沖中俊明の各証言によれば、本件売買契約が締結された昭和六二年五月一一日までに、乙部分に被告側で本件建物を建てたことが認められ、また、証人野寺光夫の証言によれば、前記富山建設が訴外日産プリンスから本件土地上の建物の建築工事を請け負って、昭和六三年九月工事に着工し本件建物を取り壊した際、本件建物は土間コンの上ではなく普通の整地された土地上にあったこと、甲部分と乙部分との間には段差がなかったことが認められる。富山建設が基礎の杭打工事を開始した際、甲部分に土間コン等の埋設物があることを知らなかったことは工事の経緯からも明らかであるが、仮に、土地全体の約五分の二を占める乙部分の土間コンが露出していたとすれば、当然その除去等を行ってから基礎工事に移ったはずであり、右除去等に伴って甲部分の土間コンや建物基礎の存在も発見されていた蓋然性が高いと思われることからも、右野寺の証言は信用性がある。証人山口勝弘も、昭和六二年二月半ばころ本件土地を測量したときには、甲部分と乙部分との間には段差がなかった旨証言している。

ところで、証人藤岡、久次は、本件建物は土間コンの上にブロックを敷いてその上に建てられた旨証言するが、もしそうであるとすれば、本件建物を建てた後わざわざ建物を持ち上げて乙部分に土を入れ整地したとでも考えざるを得ないことになる。しかし、右のような作業を行うことはあまりにも不自然であり、全証拠によってもこのようなことがなされた事実は窺いえないのであって、右各証言は採用できない。したがって、乙部分に土が被せられて甲部分との段差がなくなったのは、本件建物を建てるまでの間、すなわち本件売買契約が締結されるまでの間であったと認めるのが相当である。そして、乙部分を含めて本件土地全体が土に覆われていたとすれば、土間コンや建物基礎の存在は、通常容易に発見し得ない瑕疵であったというべきである。

なお、本件売買契約当時、乙部分の土間コンがむき出しの状態で、本件土地全体に鉄工所建物の基礎が残存していることも推測されたとすれば、相当額に上る可能性のある除去等の費用の負担について、売買契約の交渉の過程で話合いの対象になるのが通常ではないかと思われるのに、証人藤岡、沖中の各証言によれば、右の点に関する話は全く出ていないことが認められる。この点も、右認定を支持する事情の一つといえる。

4  瑕疵が通常発見しえないものであったとしても、買主がそれを知りまたは知り得べき場合は、隠れた瑕疵とはいえない。被告は、土間コン及び建物基礎の存在について、原告に悪意または過失があったと主張する。

(一)  まず、悪意の有無については、前記認定のように、本件売買契約当時、本件土地上は全体的に土で覆われていたと認めるべきであるが、証人内尾、沖中は、同人らが初めて見たときから本件土地は右のような状態であって、原告側では乙部分の土間コンが露出している状態を見聞きしたことはない旨証言しているところ、右証言の信用性を否定して、乙部分が土で覆われる以前の本件土地の状態を原告側で認識していたと認めるに足りる証拠はない。証人藤岡、久次の各証言のうち、本件建物が土間コンの上に建てられたとする点は、もし、真実であるとすれば原告の悪意を認定する根拠となり得るが、右証言は前述のように採用できないものである。したがって、原告が、本件売買契約当時、土間コン及び建物基礎の存在を知っていたとは認められない。

(二)  次に、原告が右瑕疵を認識しなかったことに過失があるか否かについて検討する。

(1) 原告が不動産業者であること、本件土地が以前鉄工所の敷地として利用されていたこと、原告がこのことを知っていたことは当事者間に争いがない。しかし、<書証番号略>によれば昭和鉄工所が本件土地を売却したのは本件売買契約の約四年前の昭和五八年のことと認められる上、鉄工所の敷地として利用されていたということだけから、通常その地中に土間コン等が埋設されている蓋然性が高いと判断すべきことにはならないから、右の点と原告が不動産業者であることをあわせ考慮したとしても、原告が本件土地に土間コン等が埋設されていることを認識しなかったことにつき過失があると認める根拠とすることはできない。

(2) <書証番号略>、証人内尾の証言によれば、原告が本件売買契約締結の直前の昭和六二年の三月終わりから四月初めまでの間に本件建物を訴外日東インダストリーから賃借したことが認められる。しかし、前記認定のように、右賃貸借契約は被告が税金対策のために締結した形式的なものにすぎず、本件売買契約を締結するまでの間に原告が本件建物を現実に利用したことはなかったと認められる。

(3) 被告は、原告が本件売買契約以前から本件土地を取得するため当時の所有者に働きかけており本件土地について熟知していたと主張するが、証人藤岡、沖中の各証言によれば、本件売買は、被告が本件土地を購入したあとの昭和六二年一月初めに沖中俊明が被告に持ちかけたものであり、原告は右沖中俊明から同年二月、買ってくれるようにいわれ、それから本件売買の交渉に入ったことが認められ、原告がそれ以前の本件土地の状況を知っていたとまで認めるに足る証拠はない。

(4) よって、原告の過失は認められない。

5(一)  原告、被告とも商人であること、原告が目的物を受け取ってから目的物を検査して、瑕疵を通知すべき期間が経過したことは当事者間に争いがない。

(二)  そこで、被告が右通知期間経過前に瑕疵を認識しており、原告に目的物検査・瑕疵通知義務が発生しない場合にあたるかどうかを判断する。

(1) 乙部分について、被告が土間コンの存在を認識していたことは当事者間に争いがなく、証人久次の証言によれば、乙部分の土間コンに基礎の一部が露頭していたというのであるから、被告は土間コン及び建物基礎の存在を認識していたものと推認すべきである。もっとも、証人藤岡、久次、岩根の各証言によれば、甲部分については、被告が購入した当時すでに地表が土に覆われ、土間コンは土中に埋もれていたことが認められるが、本件売買契約当時、土間コン及び建物基礎は、本件土地の地中に一体的なものとして存在したのであるから、その一部につき認識がある以上、全体について認識があったものと認定すべきである。

(2) 産業廃棄物の存在については、被告に認識があったと認めるに足る証拠はない。

三次に損害の発生とその額について検討する。

1  <書証番号略>及び証人野寺の証言によれば、本件土地上に建物を建築するためには本件埋設物を撤去する必要があり、原告は、本件土地を転売した訴外日産プリスから右埋設物の撤去費用八九五万円(杭打工事二四九万四〇〇〇円、地中障害物撤去工事五四八万六四〇〇円、諸経費九六万九六〇〇円)の支払いの請求を受けたことが認められる。

被告は、請求を受けただけでは損害とはいえないと主張するが、売買の目的物の瑕疵を修補するために通常必要と認められる費用について、買主は、現実にこれを支出したか否かにかかわらず、売主に対し、瑕疵担保責任に基づく損害賠償として請求できると解すべきであるから、右主張は理由がない。

2  ところで、証人野寺の証言によれば、右請求にかかる費用のうち杭打工事費二四九万四〇〇〇円は、埋設物除去のために直接必要とした費用ではなく、たまたま、訴外富山建設が本件埋設物の存在を知らずに杭打工事に着手したため杭打機械等の運搬等に要したものであることが認められ、本件土地の瑕疵を修補するために通常必要と認められる費用ではないから、右杭打工事費用相当額は瑕疵担保責任上の損害とはいえない。

また、産業廃棄物については、以上に述べたとおり、隠れた瑕疵にあたるものの、商法五二六条により請求できないのであるから、その撤去費用合計三四一万五〇〇〇円(<書証番号略>)も損害とならない。

なお、諸経費については、そのうちに産業廃棄物以外の地中障害物の撤去工事に要した分が含まれているかどうか、含まれているとしてもどの程度であるか証拠上明らかでないから、瑕疵修補費用として認めることはできない。

3  よって、損害として認めるべき額は二〇七万一四〇〇円となる。

四結論

以上のとおりであるから、原告の請求は、二〇七万一四〇〇円およびこれに対する訴状送達の日の翌日であることが記録上明らかな平成元年七月三〇日から支払済みまで民法所定年五分の割合による金員を求める限度で理由があるからこれを認容し、その余の請求は失当であるからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九二条本文を、仮執行宣言につき同法一九六条を、それぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官金築誠志 裁判官田中俊次 裁判官佐藤哲治)

別紙物件目録

第一 土地

一 所在 横浜市鶴見区鶴見中央三丁目

地番 一三三三番一

地目 宅地

地積 525.25平方メートル

二 所在 横浜市鶴見区鶴見中央三丁目

地番 一三三四番一

地目 宅地

地積 108.06平方メートル

三 所在 横浜市鶴見区鶴見中央三丁目

地番 一三三四番四

地目 宅地

地積 67.51平方メートル

四 所在 横浜市鶴見区鶴見中央三丁目

地番 一三三六番四

地目 宅地

地積 6.03平方メートル

第二 建物 未登記

右第一の土地上の鉄骨造カラー鉄板葺平屋建 事務所一棟

床面積 167.60平方メートル

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